オーバーシーディング
ゴルフコースやサッカーグラウンドなど芝生を用いたスポーツフィールドでは,年間を通して 「緑の芝生」の上でプレーできることが理想的です。
しかし,寒地型草種の通年利用が可能な北海道や北部東北地方を除き,コウライシバやノシバといった暖地型草種を利用している地帯では冬季の低温により芝草の地上部は緑色を失い休眠状態となります。 そこで,休眠期前の暖地型芝草の芝生に寒地型芝草の種子を播種生育させることにより,通年「緑の芝生」を実現する「ウィンターオーバーシーディング」と呼ばれる技術がアメリカから導入されました。
現在このウィンターオーバーシーディングに用いられる草種は,寒地型芝草類の中でも発芽生育が早く芝生としての特性にも優れたペレニアルライグラスが最も一般的に使用されています。
しかし,本来アメリカの南部地帯で休眠期のバミューダグラスの上にライグラス類をオーバーシードすることから始まった技術であるために,気候条件の違いやベースとなる芝草の特性の違いなどから,春期の草種交代(トランジション)がスムースに行われにくいという問題が現在も残されています。
また,近年ではウィンターオーバーシードの技術を応用して,暖地型草種から寒地型草種の通年利用を目的とした草種転換や,その逆の寒地型草種から暖地型草種への草種転換,寒地型草種内での草種転換まで様々な形での「オーバーシーディング」が行われるようになっています。
1m
2当たりの一般的な播種量
草種 |
グリーン |
ティー |
フェアウェー |
競技場 |
一般芝生 |
ペレニアルグラス |
100~100g |
50~100g |
30~80g |
50~80g |
40~70g |
トールフェスク |
- |
80~120g |
50~100g |
40~80g |
40~70g |
ケンタッキーブルーグラス |
- |
30~50g |
30~50g |
30~50g |
20~40g |
ベントグラス |
10~15g |
5~10g |
5~10g |
- |
- |
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ウィンターオーバーシーディング
準備作業 |
1. |
約6週間前にエアレーションを行い,抜き取ったコアはスイーパーで除去します。 |
2. |
約2週間前にバーチカッティングを行うと共に,芝の刈高を5mm程度にします。 |
3. |
前日に再度浅めのバーチカッティングを行い,スイーパーでサッチなどを除去します。 |
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播種作業 |
1. |
ドロップシーダーやスリット式のシーダーを用いて種子を最低でも縦横二度に分けて均一になるように播きます。 |
2. |
スチールマット等で芝生表面に乗った種子を摺り込み,2~3mm程度の目土を散布し,ローラーによる転圧を行います。 |
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管理作業 |
1. |
散水は発芽までの一週間程度,日に4~5回に分けて少量づつ行います。発芽後は生育状態により漸次その回数を減らします。 |
2. |
肥は発芽後2~3週間後に,チッソとカリを主成分とした肥料を施用します。 |
3. |
刈り込みは播種した芝草が5mm程度に生長した時に開始します。伸長の度合いを勘案しながら少しずつ刈高を低くしていきます。 |
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スプリングトランジション
暖地型芝草が生育を開始する約3週間前に生育中の寒地型芝草を低く刈り込むことにより,ベースの芝草に直射日光が効率よく当たるようになり地温の上昇効果も招きます。 寒地型芝草を衰退させるためには,浅めのバーチカッティングやコアリングによる個体の間引きも有効です。